「賞与(ボーナス)廃止」について、企業側・従業員側・社会全体の視点から、メリットとデメリットを整理して詳しく解説します。

そもそも賞与とは?

賞与(ボーナス)は、法律上は「賃金」に該当しますが、原則として支給義務はありません。

実際の支給有無や条件は、就業規則や労使協定で定められています。

多くの日本企業では、

基本給 + 賞与(年2回)= 年収

という給与構造が一般的です。

しかし実態としては、賞与は業績に応じた調整、人件費のバッファ、といった「調整弁」として使われているケースが少なくありません。

🏢 企業側のメリット・デメリット

✅ 企業側のメリット

① 人件費を安定的に管理できる

業績悪化時に起こりやすいのが、「ボーナスカット」を巡る不満や労使トラブルです。

賞与を廃止し、月給に一本化すると人件費の予算管理やキャッシュフローが明確になります。

② 成果主義・ジョブ型と相性が良い

賞与は「評価基準が不透明」「上司次第になりやすい」という不満を生みがちです。

年俸制・月給制に統一することで、職務価値や成果を賃金に直接反映しやすくなります。

③ 採用競争で分かりやすい

「年収〇〇万円」と明示できるため、外資系企業やIT企業に近い分かりやすい給与表示が可能です。

④ 賞与時期の資金繰り負担が消える

特に中小企業では、夏・冬の賞与支給が最大の資金繰りリスクです

❌ 企業側のデメリット

① 賃金の柔軟性が下がる

景気が悪化しても、月給は簡単に下げられません。

結果として、リストラや採用抑制に走りやすくなる可能性があります。

② モチベーション管理が難しくなる

「頑張れば賞与が増える」という短期的なインセンティブがなくなります。

評価制度が未成熟な企業ほど不満が表面化しやすくなります。

③ 日本的慣行との摩擦

年功的文化が強い職場では、ベテラン層の反発、労組との交渉難航などが起きやすく制度移行コストも高くなります。


👤 従業員側のメリット・デメリット

✅ 従業員側のメリット

① 生活設計が立てやすい

月収が増えることで、家賃審査、住宅ローン、クレジットカードが通りやすくなります。

② 「減らされる不安」が減る

賞与は会社業績次第で突然減ることがあります。

月給一本化は、収入の安定性が高まります。

③ 評価の透明性が高まりやすい

賞与査定よりも、職務等級、成果基準が明確になる傾向があります。

❌ 従業員側のデメリット

① 「まとまったお金」が入らなくなる

教育費、住宅購入、車、貯蓄など、賞与を前提にしていた家計には痛手です。

② 税・社会保険負担が増える場合が多い

月給が増えることで、厚生年金・健康保険料が毎月増加します。

年収が同じでも手取りでは損に感じることがあります。

③ 評価が厳格化するリスク

年俸制化により、成果が出なければ昇給しない、場合によっては降給といった可能性もあります。

安定志向の人には不向きです。

🏛 社会・経済全体への影響

プラス面

賃金の月例給化により、実質賃上げとして統計に反映されやすい

消費の平準化(ボーナス月頼みの消費が減る)

国際標準(年俸制)への接近

マイナス面

夏冬商戦など季節消費の弱体化

中高年層の反発による労働市場の摩擦

不況時の雇用調整が急激になる可能性

🔍 よくある誤解

❌「賞与廃止=賃下げ」

必ずしもそうとは限りません。

成功例

賞与分を12分割して月給に上乗せ

失敗例

賞与廃止+月給据え置き(実質賃下げ)

制度設計次第で、天国にも地獄にもなります。

🧭 まとめ(重要ポイント)

賞与廃止は「良い/悪い」の問題ではなく、設計の問題です。

成功の条件は
① 月給への十分な転換
② 評価制度の透明化
③ 税・社会保険の影響説明

説明不足の廃止は「実質賃下げ」と受け取られやすくなります。