レアアースはなぜ中国依存?供給の実態と日本への影響
レアアース(希土類)は、電気自動車やスマホ、半導体、風力発電など最先端産業で不可欠な戦略資源です。
世界の供給は中国への依存度が非常に高く、80%を超える生産シェアとされており、供給リスクや価格変動が日本や米欧に影響します。
そのため日本政府は調達多様化や国内資源開発、リサイクルなどを進める方針です。
レアアースとは何か?
レアアース(希土類)は、17種類の化学元素の総称で、磁石や触媒、電子部品などに使われます。
特に使用量が多い主要レアアースは、
・ネオジム
・ジスプロシウム
・プラセオジム
などで、強力な永久磁石やモーター、スマホの振動機構などに使われます。
世界のレアアース生産と中国依存度
中国の圧倒的なシェア
世界のレアアース供給に関しては、中国が生産・精製・加工のほぼすべての工程で支配的地位を占めています。
・採掘量 → 世界の約60〜70%
・精製・加工 → 約80〜90%超
とされており、日本や米国、EUは大きく依存しています。この供給構造は、中国依存度が極めて高い「供給リスクのある産業構造」といえます。
なぜ中国が強いのか
中国が生産を主導する要因としては、
・大規模な鉱山資源の存在
・安価な労働力・加工力
・環境規制の緩さ(歴史的に)
などが挙げられます。特に精製・分離といった高度な化学処理プロセスを中国企業が確立しているため、実際のモノづくりでは中国依存が進んでいます。
日本における依存の影響
サプライチェーンの脆弱性
日本は、スマホやEV、風力発電といった成長分野の製造でレアアースに依存しています。
中国が供給を制限した場合、
・部品コストの上昇
・生産遅延
・輸出競争力の低下
などの影響が懸念されます。
政府の安全保障上の位置づけ
レアアースは、経産省・防衛省ともに戦略物資として位置づけられています。
供給途絶が国家経済・安全保障に直結すると考えられており、政策面でも重要課題です。
供給多様化に向けた取り組み
オーストラリア・米国との連携
日本は、オーストラリアや米国など中国以外の鉱山開発・精製プロジェクトと連携を進めています。
例えば、
・オーストラリアのレアアース鉱山開発支援
・米国での精製能力強化支援
などです。
国内資源の開発・リサイクル
レアアースは日本国内にも埋蔵があるとされ、今後の資源開発の活用が期待されています。
また、使用済み電子機器からのリサイクルによる再生回収の技術開発も進展しています。
安全保障・供給保障対策
政府は、
・戦略的備蓄
・供給元の多様化
・企業向け融資・支援制度
を進め、供給リスクに備える方針です。
中国依存度の懸念と国際情勢
中国は過去に、政治的な対立や輸出管理強化をちらつかせることがあり、供給制限が価格や調達に影響した事例があります。
レアアースは、単なる原材料ではなく、国際政治のカードとしても使われる可能性があるため、各国が注視しています。
まとめ
レアアースは最先端産業に不可欠な資源でありながら、世界の供給は中国に大きく依存しています。
この依存度はサプライチェーンや安全保障へのリスクをはらんでおり、日本政府は調達多様化や国内開発・リサイクルなどで対応を進めています。
今後の技術革新や国際協力が、依存度低減の鍵となります。